IW's Breed Standard
スタンダードとはその犬種の理想の形を規定したもので、すべてのブリーダーは繁殖の際、すこしでもスタンダードに近い犬をつくるよう努力することが求められています。犬種の特徴を維持し、質を高めていくためにとても大事なものといえます。ドッグショーでの審査は、この犬種スタンダードに基づいて行なわれます。
但し、アイリッシュ・ウルフハウンドのスタンダードはイギリスとアメリカで若干の違いがあります。また、スタンダードは非常に簡潔に書かれ、ときとして抽象的な言葉を用いるため、どうしても解釈の余地が残ります。事実、国ごと、繁殖者ごとに異なった傾向の犬がつくられているのが現状です。ひとくちに「スタンダードに近づけよう」といっても、そう簡単には行かないのが繁殖の難しさでもあります。
「理想のウルフハウンド」とはどんな犬か?突き詰めれば人により微妙に異なるのかもしれません。なるべく多くの犬を実際に見ることが犬種を知るためには第一ですが、常にスタンダードに立ち返り、照らしあわせてみることもとても大事です。
サイズ
オス 79cm、55kg以上 : メス 71cm、41kg以上
FCI分類
10グループ (サイト・ハウンド)
おもな特徴
細長い頭部 /目の上・顎の下の長い毛/小さな、濃い色の目/
小さな耳(ローズイヤー)/長く強い首/深い胸/発達した長めの胸郭/
やわらかなカーブのトップライン/引き締まった腹部/
つけねが低い位置にある、長くて弧を描く尾/
粗く、やや長めの被毛/優美なつくりと軽快な歩様
ウルフハウンドのスタンダードは、1885年、IWC(アイリッシュ・ウルフハウンド・クラブ、イギリス)によって最初に定められました。以後数回の改定がなされてきましたが、現在でも基本にあるのは1885年のスタンダードです。
IWCスタンダードは、71年-73年に改定され(目の色について追加)、さらに81年の改変の結果、グレート・デーンとディアハウンドとの比較が削除されたほか、咬み合わせと毛質についての記述が加えられました。IWCI(アイリッシュ・ウルフハウンド・クラブ・オブ・アイルランド)は、このIWCスタンダードに従っています。
なお、現在FCIのショーでは、IWCの73年改定スタンダードが使用されています。
IWCA(アイリッシュ・ウルフハウンド・クラブ・オブ・アメリカ)の現行スタンダードは、1885年IWCスタンダードに基づき、1950年に変更を加えたものです。グレート・デーンとディアハウンドとの比較が削除され、ギャロッピング・ハウンドである点が強調された点と、最低サイズが引き上げられた点が主な変化。IWCC(アイリッシュ・ウルフハウンド・クラブ・オブ・カナダ)はIWCAのスタンダードを採用しています。
イギリスでは1986年にKC(ケネル・クラブ)がIWCスタンダードに大きな変更を加え、他犬種との比較や抽象的な表現が大幅に削除されました。IWCからは反対の声が強かったものの、KCスタンダードがイギリスにおける現行スタンダードとなっています。
1885年スタンダードに、噛み合わせ、目の色、毛質についての追加事項を加えた形が、もっともわかりやすいスタンダードではないかと思っています。とくに「全体的外観」の項目におけるグレート・デーンとディアハウンドとの比較の記述は、ウルフハウンドという犬種の外見の全体的特徴について、誰もが容易に、かつ適確に把握できる説明といえ、これをスタンダードから削ってしまったのは残念なことです。
IWCスタンダード(1885年)
優秀基準(Standard of Excellence)
-
全体的外観: アイリッシュ・ウルフハウンドはグレート・デーンほどではないが、ディアハウンドよりは重たくがっしりしていなければならない。その他の点では全般にディアハウンドに似ている。サイズは大きく、堂々とした外観で、非常に筋肉が発達し、力強く優美なつくりで、動きはなめらかで闊達。頭部と首は高く上げている。尾は上に向かって流れ、先端にかけてわずかにカーブしている。
雄犬の体高と体重は最低31インチ(79cm)・120ポンド(54.5kg)。雌犬は最低28インチ(71cm)・90ポンド(40.9kg)。これ以下の場合は競技から退けられる。体高(肩の高さ)と均整の取れた胴体の長さを含めて、巨大なサイズを達成することが何より求められており、雄犬の平均が32-34インチ(81-86cm)の、必須のパワー、活動性、勇気と均整美を示す種をしっかりと確立することが望まれる。 - 頭部: 長く、前頭部の額の骨は、非常にわずかに上がっており、目の間の間隔は非常に狭い。頭蓋骨は幅が広すぎない。口吻は長く適度に尖っている。耳は小さく、グレイハウンドのようなつき方。
- 首: やや長く、非常に力強く筋肉質で、よくアーチ形をなし、喉の部分に胸垂(皮膚のたるみ)がない。
- 胸部: 非常に深い。前胸は広い。
- 背中: どちらかといえば長い。腰部はアーチ形をなす。
- 尾: 長く、軽く弧を描く。中くらいの厚さで、しっかり毛に被われている。
- 腹部: よく巻き上がっている。
- 前半身: 肩は筋肉が発達し、胸に深さを出し、斜めについている。肘は十分に入り、外側にも内側にも出ていない。脚:前脚は筋肉質で、脚全体が強靭で、ほぼまっすぐ。
- 後半身:腿は筋肉質で、下腿部はグレイハウンドのように長く強靭。飛節は十分低く、外側にも内側にも曲がっていない。
- 足: 中程度に大きく丸い。外にも内にも向いていない。足指はよく湾曲し、閉じている。つめは非常に強く湾曲している。
- 毛: 胴体と脚、頭部の毛は強くて硬い。目の上と顎の下は特に長く強い。
- 色とマーキング: 認められている色はグレイ、ブリンドル、レッド、ブラック、ピュア・ホワイト、フォーン、またはディアハウンドに見られる色すべて。
- 欠点: 軽すぎる、または重すぎる頭部。盛り上がりすぎた額。大きな耳と、顔にぴったりつくように下がっている耳。短い首。発達した胸垂。幅が狭すぎる、もしくは広すぎる胸。沈んだ、くぼんでいる、またはほぼまっすぐな背中。曲がった前脚。曲がりすぎた球節。ゆがんだ足。広がった足指。曲がりすぎた尾。貧弱な後半身と全般的な筋肉の不足。短すぎる胴。
得点に値する特徴リスト(List of Points in Order of Merit)
- タイプ:アイリッシュ・ウルフハウンドはグレート・デーンほどではないが、ディアハウンドよりは重くがっしりしている。その他の点ではディアハウンドに似ている。
- 巨大なサイズと堂々とした外観。
- 動きはなめらかで闊達。
- 長く平らな頭部は高く上げている。
- 骨が太く、ほぼまっすぐな前脚。しっかり納まった肘。
- 長く筋肉質な腿。下腿部はよく筋肉がつき、膝はほどよく曲がっている。
- コートは粗く硬く、目の上と顎の下は特にしなやかで長い。
- 胴は長く、肋骨がよく発達してふくらみ、腰の幅は大きい。
- アーチ状の腰。腹はよく巻き上がっている。
- 耳は小さく、グレイハウンドのようなつき方。
- 足は中程度に大きく丸い。指は閉じていて、よく湾曲している。
- 首は長く、アーチ状をなし、非常に強靭。
- 胸は非常に深く、中程度に広い。
- 肩は筋肉質でわずかに傾いている。
- 尾は長く、わずかにカーブしている。
- 濃い色の目。
注記:以上のリストは、いかなる点でも優秀基準(スタンダード)を変更するものではない。優秀基準は常に厳密に固守しなくてはならない。リストは賞点に値するさまざまな特徴を挙げたに過ぎない。もし優秀基準と相違するように思われる点があれば、正しいのは優秀基準である。
IWCA変更箇所(1950年)
*変更箇所以外はIWCの1885年スタンダードに準じる。
1. アイリッシュ・ウルフハウンドは強さと速さと、鋭い視力を兼ね備えている点に特徴がある。最大かつ最も体高の高いギャロッピング・ハウンドであり、全体的なタイプとしては毛の粗いグレイハウンドのような種である。サイズは大きく、堂々とした外観で、非常に筋肉が発達し、力強く、優美なつくりで、動きはなめらかで闊達。頭部と首は高く上げている。尾は上に向かって弧を描き、先端にかけてわずかにカーブしている。雄犬の体高と体重は最低32インチ(81.5cm)・120ポンド(54.5kg)。雌犬は最低30インチ(76cm)・105ポンド(46kg)。これは生後18ヶ月以上の犬に該当する。これ以下の場合は競技から退けられる。体高(肩の高さ)と均整の取れた胴体の長さを含めて、巨大なサイズを達成することが何より求められており、雄犬の平均が32-34インチ(81-86cm)の、必須のパワー、活動性、勇気と均整美を示す種をしっかりと確立することが望まれる。
13. 薄茶色または色素が薄い唇と鼻 [*「欠点」の最後に追加]
IWC改定スタンダード(1973年)
- 全体的外観: アイリッシュ・ウルフハウンドはグレート・デーンほどではないが、ディアハウンドよりは重たくがっしりしている。その他の点では全般にディアハウンドに似ている。サイズは大きく、堂々とした外観で、非常に筋肉が発達し、力強く優美なつくりで、動きはなめらかで闊達。頭部と首は高く上げている。尾は上に向かって弧を描き、先端にかけてわずかにカーブしている。
- 頭部と頭蓋骨: 長く、前頭部の額の骨は非常にわずかに上がっており、目の間の間隔は非常に狭い。頭蓋骨は幅が広すぎない。口吻は長く適度に尖っている。
- 目: 暗い色。
- 耳: 小さく、グレイハウンドのようなつき方。 首:やや長く、非常に力強く筋肉質で、よくアーチ形をなし、喉の部分に胸垂(皮膚のたるみ)がない。
- 前半身: 肩は筋肉が発達し、胸に深さを出し、斜めについている。肘は十分に入り、外側にも内側にも出ていない。脚・前脚は筋肉質で、脚全体が強靭で、ほぼまっすぐ。
- 胴: 胸部は非常に深い。前胸は広い。背中は短いというよりは長い。腰部はアーチ形をなす。腹部はよく巻き上がっている。
- 後半身: 筋肉質な腿で、下腿部はグレイハウンドのように長く強靭。かかとは十分低く、外にも内にも向いていない。
- 足: 中程度に大きく丸い。外にも内にも向いていない。足指はよく湾曲し、閉じている。つめは非常に強く湾曲している。
- 動き:なめらかで闊達。 尾:長く、軽く弧を描く。中くらいの厚さで、しっかり毛に被われている。
- 被毛:胴体と脚、頭部の毛は強くて硬い。目の上と顎の下は特に長くしなやか。
- 色:認められている色はグレイ、ブリンドル、レッド、ブラック、ピュア・ホワイト、フォーン、またはディアハウンドに見られる色すべて。
- 体重とサイズ:雄犬の体高と体重は最低31インチ(79cm)・120ポンド(54.5kg)。雌犬は最低28インチ(71cm)・90ポンド(40.9kg)。これ以下の場合は競技から退けられる。体高(肩の高さ)と均整の取れた胴体の長さを含めて、巨大なサイズを達成することが何より求められており、雄犬の平均が32-34インチ(81-86cm)の、必須のパワー、活動性、勇気と均整美を示す種をしっかりと確立することが望まれる。
- 欠点:軽すぎる、または重すぎる頭部。盛り上がりすぎた額。大きな耳と、顔にぴったりつくように下がっている耳。短い首。完全な胸垂。幅が狭すぎる、もしくは広すぎる胸。沈んだ、くぼんでいる、またはほぼまっすぐな背中。曲がった前脚。曲がりすぎた球節。ゆがんだ足。広がった足指。曲がりすぎた尾。貧弱な後半身と全般的な筋肉の不足。短すぎる胴。ピンク色または薄茶色の瞼。黒以外の色の唇、鼻。非常に明るい目の色。
- 注記:雄は二つの睾丸が陰嚢から完全に降りていなければならない。
得点に値する特徴リスト[略]
1981年変更部分
- 全体的外観: アイリッシュ・ウルフハウンドはギャロッピング・ハウンドのうちで最大かつ最も背が高い。力強さと速さと鋭い視力を兼ね備え、全体的なタイプとしては毛の粗いグレイハウンドのような種である。サイズは大きく、堂々とした外観で、非常に筋肉が発達し、力強く、かつ優美なつくりで、動きはなめらかで闊達。頭部と首は高く上げている。尾は上に向かって弧を描き、先端にかけてわずかにカーブしている。
- 歯:噛み合わせは、シザー・バイト(交鋏状咬合)が理想だが、レベル・バイトも許される。 [*「耳」のあとに項目追加]
- 欠点:柔らかい、シルキーまたは羊毛のような被毛 [*「欠点」の最後に追加]
KCスタンダード(1986年)
- 全体的外観:サイズは大きく、力強く、均整美と堂々とした外観、非常に筋肉が発達しているが、優美なつくり。
- 特徴:非常な力、活動性、スピードと勇気
- 頭部と頭蓋骨:頭部は長く、高く上げ、前頭部の額の骨は、非常にわずかに上がっており、目の間の間隔は非常に狭い。頭蓋骨は幅が広すぎない。口吻は長く適度に尖っている。鼻と唇は黒い。
- 目:暗い色。楕円形でたっぷりしている。瞼は黒い。
- 耳:小さく、ローズ形で、ベルベットのような繊細な手触り。できれば濃い色が望ましく、顔近くに下がっていない。
- 口:顎は強く、完全な、通常のシザー・バイト(交鋏状咬合)、すなわち上の歯が下の歯にぴったりとかぶさっており、顎に対して直交している。レベル・バイトは許容されるが、望ましくない。
- 首:やや長く、非常に力強く筋肉質で、よくアーチ形をなし、喉の部分に胸垂(皮膚のたるみ)がない。
- 前半身:肩は筋肉が発達し、胸に深さを出し、斜めについている。肘は十分に入り、外側にも内側にも出ていない。脚と前腕は筋肉質で、脚全体が強靭で、ほぼまっすぐ。
- 胴:胸部は非常に深い。前胸は広い。背中は短いというよりは長い。腰部はアーチ形をなす。腹部はよく巻き上がっている。
- 後半身:筋肉質な腿と下腿部は長く強靭。膝が十分曲がり、かかとは十分低く、外にも内にも向いていない。
- 足:中程度に大きく丸い。外にも内にも向いていない。足指はよく湾曲し、閉じている。つめは非常に強く湾曲している。
- 尾:長く、軽く弧を描く。中くらいの厚さで、しっかり毛に被われ、低く垂れて先端にかけては上向に弧を描く。
- 歩様・動き:滑らかで闊達。
- 被毛:胴体と脚、頭部の毛は強くて硬い。目の上と顎の下は特に長くしなやか。
- 色:認められている色はグレイ、ブリンドル、レッド、ブラック、ピュア・ホワイト、フォーン、フィートン、スティール・グレイ。
- サイズ:最低体高は雄犬で79cm(31インチ)、雌犬で71cm(28インチ)。最低体重は雄犬54.5kg(120ポンド)、雌犬は40.9kg(90ポンド)。肩の高さと、つりあいのとれた胴の長さをともなった、大きなサイズが目標とされ、雄犬の平均が81-86cm(32-34インチ)の種をしっかりと確立することが望まれる。 欠点:以上の特徴から外れる点はすべて欠点とされ、欠点の重大さはその乖離の程度に正確に応じる。
- 注記:雄は二つの睾丸が陰嚢から完全に降りていなくてはならない。